Monthly Archives: 10月 2017

国民審査

明日の22日は、衆議院議員選挙の日…。ですが、今回取り上げるのは同日に行われる「国民審査」です。
国民審査の正式名称は、「最高裁判所裁判官国民審査制度」。文字通り、最高裁判所の裁判官を国民が審査する制度です。
この制度に関する法律もあります。「最高裁判所裁判官国民審査法」。名称そのままです。

この国民審査ですが、認知度が低いのだそうです。
原因はいろいろとあるのだと思いますが、選挙の影に隠れてしまっている印象は確かにあります。

審査日は投票日

先程、選挙の影と表現しましたが、国民審査の審査日は衆議院議員選挙の選挙日と同日です。
これは日本国憲法で定められています。

日本国憲法には、

「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。」

とあります。

つまり、国民審査が行われるときは必ず衆議院議員選挙が行われますが、衆議院議員選挙が行われるからといって国民審査が行われるわけではないということになります。

審査の方法は「×」を書くか否か

国民審査と衆議院議員選挙が同日に行われることもあり、国民審査も投票所で行います。

審査の方法ですが、審査を受ける裁判官の氏名が印刷された投票用紙の記入欄に、辞めさせたい意思があれば「×」を記載し、なければ何も記載せずに投票します。

ここで注意が必要なのは、「×」以外の事項を記載した投票は無効になることです。うっかり「○」などを記載してしまうと、無効になってしまいます。

審査対象の裁判官を知るには

「最高裁判所の裁判官なんて会ったことも見たこともないよ。」という人が大半ではないでしょうか。
ましてや、どのような裁判に関与しているかなどは、裁判やその判例に関わる仕事でもしていない限り、皆無に近いのではないでしょうか。
このような事態は想定済みなのかどうかはわかりませんが、総務省では、以下の内容が案内されています。

国民審査が行われる際には、審査に付される裁判官の氏名、生年月日、経歴、最高裁判所において関与した主要な裁判等を掲載した審査公報が発行されます。
また、最高裁判所のホームページで、略歴、裁判官としての心構え、最高裁判所において関与した主要な裁判などの情報が掲載されています。
なお、裁判所ホームページでは、裁判官名のキーワードで、その裁判官が関与した裁判例を検索することができます。

マイナポータルの代理人

昨日、「マイナポータルでできること」をご紹介しました。
その中に「代理人メニュー」というものがありました。
文字通り、本人に代わって代理人がマイナポータルを利用できるということなのですが、どのようなものなのでしょうか。

代理権があるのは3つ

代理人が本人に代わって作業ができるのは、「やり取り履歴」「あなたの情報」「お知らせ」の3つのようです。
これらに関する説明は以下の通りです。

やり取り履歴…あなたの個人情報を、行政機関同士がやりとりした履歴を確認
あなたの情報…行政機関等が保有するあなたの個人情報を確認
お知らせ…行政機関等から配信されるお知らせを受信

これらに関する要求や請求、確認、閲覧、回答、保存といったことが代理人として行え、削除はできなようです。

代理人の設定

代理人というからには、本人が代理人に委任しなければなりません。
この設定の際には、本人と代理人が同席のもと、マイナポータルから代理権限の内容、期間等を設定し、代理人が自身のマイナンバーカードを読み込ませて、代理人登録をする仕組みとなっているようです。
登録後も委任内容の変更や、代理人の解除は随時行うことができます。

案内のとおりであれば、「同席すること」と「代理人のマイナンバーカード」が必要になることになります。

代理人の筆頭候補は税理士?

「代理人メニュー」の説明資料には、具体的な手続きの方法などが記載されています。
その紹介例の中に記載されている代理人は、税理士です。

マイナンバーが災害と税と社会保障に利用するために、付与された背景を考えれば、マイナポータルもこうした考えをもとに展開されていることは容易に想像がつきます。
税の代理人といえば、税理士。そのような考えで紹介例に税理士が記載されているのかもしれませ。

「代理人としては、税理士などが考えられるよ」ということなのかもしれませんが、実のところ税理士の間でもこのような話はまだ、持ち上がっていないように思えます。
マイナポータル自体が、本格的な運用に至っておらず、普及していないためなのかもしれませんが、内容からすれば、確かに税理士が代理人となる可能性がありそうです。

ただ、ここで少し疑問が湧いてきます。

「代理人のマイナンバーカード」です。登録時のみならず、処理時にも必要になるはずです。
税理士は、任意ですが電子証明書を取得することができます。税理士であることを証明するICカードで、電子申告を行う際必要になるため、ほとんどの税理士が所有しています。

疑問というのは、「電子証明書では代用できないの?」ということです。

案内資料を読んだだけで確認はしていないのですが、もし代用不可ということであれば、マイナポータルの利用にはマイナンバーカード、電子申告には電子証明書と、2種類のカードが必要になることになります。
しかも、マイナポータルと電子申告をするためのシステムであるe-taxはリンクするようになっています。

制度自体がまだ普及途中ですが、折を見て確認が必要になるかもしれません。

マイナポータル

連日年末調整について取り上げてきましたが、その運用上の中枢となるのは、マイナポータルです。
それではマイナポータルというものは、どのようなものなのでしょうか。

政府のオンラインサービス

年末調整の際に、政府が提供するクラウドサービスというように説明しましたが、政府の言葉を借りるのであれば、「政府が運営するオンラインサービス」となります。

とりわけ政府が用意したインターネット上の私書箱や貸金庫といったイメージでしょうか。
もちろんその鍵となるのは、マイナンバーカードです。マイナンバーカードは所有する個人を識別する情報が格納されていますので、これを鍵とすることで、システムの安全性が保たれるという論理なのかもしれません。

ただ、私書箱や貸金庫とは決定的に異なることがあります。これらは鍵を持っている本人しかその中身を見ることはできませんが、マイナポータルは行政側からも必要な情報が見ることができます。
というよりも、そもそもマイナポータルは行政手続きのためのシステムですので、当然のことなのかもしれません。

マイナポータルは、行政手続きなどに必要な情報を集約して処理ができるように構想されているため、これからも利用範囲は拡大していくことは容易に想像できます。
手続きだけではなく、情報提供や民間サービスとの連携も考えられており、利用者にとってもメリットがあるとされていますが、マイナポータルが普及することで受ける恩恵の比重は、行政側が重くなることは間違いないでしょう。

マイナポータルでできること

「結局何ができるの?」と思う人が多いと思いますが、内閣府によると具体的には以下のサービスが予定されています。

  • 民間送達サービスとの連携
    行政機関や民間企業等からのお知らせなどを受け取り
  • 公金決済サービス
    マイナポータルのお知らせからネットバンキングやクレジットカードでの公金決済
  • 自己情報表示
    行政機関等が保有するあなたの個人情報の確認
  • お知らせ
    行政機関等から配信されるお知らせを受信
  • よくある質問/問い合わせ登録
    操作方法に関するFAQを確認、問い合わせ
  • サービス検索・電子申請機能
    子育てに関するサービスの検索やオンライン申請
  • 情報提供等記録表示
    個人情報を行政機関同士がやりとりした履歴の確認
  • 外部サイト
    外部サイトを登録することで、マイナポータルから外部サイトへのログイン
  • 代理人メニュー
    本人に代わって代理人がマイナポータルを利用

年末調整ネット化の影響

昨日、年末調整の手続きをインターネットを通じて済ますことができる仕組みを導入する方針であることが明らかになったことを取り上げました。
運用はマイナンバーカードが必要になるマイナポータル上で行われることが想定されています。
年末調整のネット化の法整備が整うとどのようになるのでしょうか。先走って想像してみました。

民間企業が動く

現在マイナンバーカードの取得は、任意です。取得をしたい人だけが申請をして取得できるようになっています。

年末調整のネット手続きか可能になった場合、年末調整に関する証明書を交付している民間企業が行動を起こすことが考えられます。
コストの削減が期待できるからです。
現在は、紙面により年末調整に係る証明書を本人に郵送しているため、印刷代、郵送代などのコストが諸々とかかっています。

ただ、マイナポータルは本人がマイナンバーカードを取得して、(表現が正しいか分かりませんが)開設しなければ、情報を送ることはできません。
そこで考えられるのは、紙面による郵送が有料になる可能性です。

このことは、ペーパレス化への取り組みの1つと考えれば、実際に前例があります。
以前、NTTドコモが携帯電話の利用明細をペーパレス化しました。
この変更はペーパレス化が原則で、従前どおりに紙面による郵送で明細がほしい人は、手続きが必要なうえ有料となる。といったものでした。
当初、何も気に留めていなかった人は、いきなり利用明細が送られてこなくなったと思った人は少なくないのではないでしょうか。

マイナポータルの開設が必要な関係上、強制的にペーパレス化になることはないはずですが、有料化の可能性は依然として残ります。
もし有料化となれば、マイナンバーカードを取得する人が増えることは容易に想像できます。
マイナンバーカードの普及を促進している行政側も、当然こうしたことを想定しているのではないでしょうか。

年末調整とは

ところで年末調整とは、給与所得者に対する所得税の計算です。1年間の所得税額を確定して、給与から天引きされていた所得税額の合計額との差額を精算するものです。
所得税額の計算には様々な情報が必要になります。収入金額、扶養親族、保険など様々です。

年末調整のネット化が実現したとき、具体的にどのように運用されていくのか定かではない部分がありますが、少なくとも個人に関して言えば、情報の一元化がマイナポータル上で図られ、その動きは拡大しているということは間違いなさそうです。

年末調整もネットで?

年末調整。この言葉が登場してくる時期になりました。
とは言っても、今回は来年度の税制改正に関わる話です。
毎年12月の下旬になると、来年度の税制改正に向けて、税制改正大綱が公表されます。

ちょうどこの時期は、その大綱の作成に向けて、税制調査会などで内容が検討されているところになります。
その政府税制調査会で、年末調整の手続きをインターネットを通じて済ますことができる仕組みを導入する方針であることが明らかになったようです。
トピックとして取り上げられたのは、これから年末調整が行われる時期となりますので、これに合わせてということだったのではないでしょうか。

この時期になると、保険会社から生命保険控除証明書など、年末調整に必要な書類が送られてくるようになります。
私たち税理士も、お客様にその従業員等から必要な資料等を収集してもらうための案内を行ったりします。いわゆる年末調整のご案内です。

ネット手続きが導入されると

年末調整の手続きでインターネットが利用されるようになると、どのようになるのでしょうか。

この疑問についての最も単純な回答は、「今まで紙面で郵送されていたものが、郵送されず、データで渡されるようになる。」だと思います。
今まで郵送されてきた、保険料の控除証明書や、住宅ローンの残高証明書などが郵送されなくなります。

結局はマイナンバーカード?

年末調整の資料がデータで渡されるといっても、その種類はいろいろとあります。例えばメールです。
しかし、紙面で送られてきていたものが、メールに変わっただけでは、「インターネットで年末調整」は実現しません。

証明書の内容が年末調整という処理に組み込めなければ、紙面の内容をインターネット上のシステムに入力しているのと変わりはないからです。これでは作業の軽減になりません(課税庁側はこれだけでもデータ化したものが提出されることになるので、削減になりますが。)。

「インターネットで年末調整」の土台として、「マイナポータル」が考えられています。

「マイナポータル」は、簡単にいうと、政府が提供するクラウドサービスです。
政府がマイナポータルに年末調整に対応したシステムを作り、そこに必要な情報が集まるという仕組みです。

事業者は、従業員などからこの「マイナポータル」に集められた情報を提出してもらい、年末調整を行うということになります。

このような情報は当然、安全性が考慮されるべき情報です。
「マイナポータル」を利用するために必要になるのは、マイナンバーカードです。

行政側では、「行政事務は簡素化されるし、マイナンバーカードも普及できる。その上、民間にもメリットがある。いい案でしょ?」と思っているのではないでしょうか。

Wi-Fiに脆弱性

スマートフォンの普及もあり、Wi-Fiという言葉も一般的な言葉になってきました。
少し前までは、「Wi-Fiって何?」というように、よく分からないものとして扱われていたような印象があります。
今ではWi-Fiを利用している人も多いため、このようなことも無くなってきているように思えます。

そのようなWi-Fiですが、脆弱性があり攻撃を受ける可能性があることが明らかとなったそうです。
Wi-Fiの暗号化に使われるWPA2プロトコルの脆弱性のようで、これが標準で装されたものに関しては、すべて影響を受ける可能性があるそうです。
この詳細は、12月に開催されるセキュリティイベント「black hat Europe 2017」で解説されるそうです。

話の途中から、IT関係に詳しい人を除いて「???」となってしまったかも知れません。
私も素人ですが、素人なりの理解で話を進めて行きたいと思います。

Wi-Fiは無線通信

Wi-Fiは無線通信であることは言うまでもありません。
Wi-Fiに対応したPCとルータとの間をWi-Fiによって通信するという使い方が一般的です。ルーターを介してインターネットに繋がります。
冒頭にもあるとおり、スマートフォンについても同じ原理です。スマートフォンは通常であれば単独で通信機能を有していますが、パケット量の上限などの問題でWi-Fiが利用されていたりします。

Wi-Fiは無線通信ですので、誰でもその通信電波自体をキャッチすることが可能です。よって、通信の暗号化が必須になります。

先の「WPA2」というのは暗号化方式の名称です。
Wi-Fiの暗号化の方式にはいくつか種類があり、安全性の高い順で言うと、WPA2>WPA>WEPとなります。
そして現状でもっとも利用されているのも、WPA2方式となっているのではないでしょうか。

今回、そのWPA2に関わるものに脆弱性が見つかりました。
ただ、WPA2による暗号が解読されたというわけではなく、WPA2プロトコルに脆弱性があったようです。

プロトコル。IT関連の話ではよく出てくる言葉ですが、よく「手順」として説明されます。
つまり、WPA2という暗号方式を使うための手順があり、そこに脆弱性があった。ということになるのではないかと思います。

ネット社会

今やインターネットを利用しないということは、ほとんど無い社会です。
税理士の仕事もインターネットが利用できなければ、仕事に影響を及ぼします。
調べ物も紙面に限られてしまいますし、クラウド会計などの会計ソフトも利用できなくなります。そして、何より電子申告ができなくなってしまいます。
また、税理士の業務では、個人情報はもとより、お金という大事な情報も扱います。

今回の脆弱性にによる影響がどこまであるのか分かりませんが、Wi-Fi接続の際には扱う情報を気をつけたほうがよさそうです。

源泉徴収漏れ・後編

本日は、源泉徴収漏れの後編です。
途中からで話が分からないという方は、「源泉徴収漏れ・前編」をご覧下さい。

源泉徴収漏れを指摘されるのは、前編でいうところの、税理士に100万円の報酬をそのまま支払っていたケースです。
本来なら10万円を源泉徴収して納付しなければならなかったのですが、これを行っていなかったということで、会社は源泉徴収すべきであった10万円を納付することになります。
なお、加算税や延滞税がかかることがありますが、ここでは考慮しないこととします。

源泉徴収漏れ分を納付したら

源泉徴収義務者がその義務を履行していなかったので、納付する。
ここまではよいとして、この先どのようになるのでしょうか。

前編でも述べましたが、納付するのは税理士に課税される税金です。
本来、源泉徴収義務を履行していれば、10万円を国、90万円を税理士となり、会社の支出は合わせて100万円となります。
源泉徴収漏れが指摘され納付した場合は、10万円を国、100万円を税理士に支払っていることになり、会社の支出は合わせて110万円です。

このままでは、会社は10万円多く負担することになってしまいます。
義務があるとはいえ、源泉徴収税額は、最終的には他者の税金に関わるものです。このままでは道理が立ちません。
この10万円についてですが、結論を言うと、税理士が負担するということになります。

源泉対象者が負担

その方法は、

  1. 後の報酬の支払いの際に差し引く
  2. 直接請求する

です。このように10万円が処理されると、その差し引いた、又は、入金されたときに、その金額は源泉所得税として扱われます。

例えば、「1」のケースでは、100万円の報酬から差し引く源泉所得税は10万円ですが、そこからさらに徴収漏れが指摘された10万円を差し引いて、80万円を税理士に支払います。
この場合、税理士は自身の確定申告の際に、源泉徴収税額を20万円として申告します。

前編では、税理士が直接納付する税額は30万円‐10万円の20万円でしたが、この場合は30万円‐20万円の10万円となるわけです。
全体的にみれば、これで辻褄が合うことになります。

辻褄が合えば、それで良い?

辻褄が合うから問題がないかといえば、そうとも言い切れません。
例では、源泉徴収の相手が税理士でしたが、これが通常の取引先であったならどうでしょうか。

源泉徴収をせず100万円の報酬支払っていたときに、「源泉徴収漏れが指摘されましたので、次の支払金額は80万円となります。その後は90万円の支払いとなります。」というようなことを取引先に説明しなければならなくなるわけです。
関係悪化につながらないとも言い切れません。
事業を営んでいると、法人税や所得税、消費税などは気にすることが多いと思いますが、源泉所得税も決して軽視できない税金です。

なお、これまでの説明に関しては、源泉徴収漏れに関しての全体的なイメージをつかんで頂きたい為に、詳細を省いていたり、その他の取り扱いがあるものもありますので、そちらはご留意ください。

源泉徴収漏れ・前編

昨日、源泉所得税について取り上げました。
源泉徴収義務者は、その対象者に支払いをする場合、所得税を徴収して、これを国(税務署)に納付しなければなりません。
このため、源泉徴収義務者に徴収漏れがあった場合には、徴収が漏れた分の所得税の納付を求められます。
これは昨日も取り上げたとおりです。

ここで勘のよい人は、あれっ。と思うのかもしれません。
これも昨日述べたことですが、支払っているのは源泉徴収をした対象者の所得税です。
対象者はこれにかかわらず、自分自身の納税手続きを行っているはずです。
これはどういうことでしょうか。

源泉徴収制度と所得税の関係

昨日の例では、対象者が給与所得者、つまり従業員でしたが、給与所得者には年末調整という特別な取り扱いがあります。
そこで、今回は対象者を税理士にして説明してみたいと思います。

会社が税理士に報酬を支払う場合、源泉徴収をします。
税理士へ報酬を支払う場合の源泉徴収税率は、10%(復興所得税を除く。)です。
よって、1年間の報酬が100万円だとしたら、源泉所得税は10万円です。90万円を税理士へ、10万円を国へ支払います。

税理士は確定申告

税理士には年末調整の適用はありません。よって、1年間の自分の所得について確定申告をしなければなりません。
先の会社からの報酬も含めて所得税額を計算したら、30万円になったとします。
この場合、税理士が国に支払う金額は30万円-10万円の20万円です。
10万円は既に会社から国へ支払われていますので、残りの20万円を支払えばよいわけです。
これが源泉徴収制度を踏まえた所得税の仕組みです。

源泉徴収がされなかったら

先の例で会社が源泉徴収をせず、100万円を税理士に支払っていたとしたら、どのようになるでしょうか。
結論を先に言いますが、税理士は自身の確定申告で30万円を国に支払います。
どちらの例でも、税理士の所得税額は30万円で変わりはありません。先に10万円を報酬から差し引いて会社に支払ってもらうかどうかの違いです。
「結局、同じじゃないか。」と思われてしまいそうですが、ここで問題となるのが、源泉徴収義務が規定されていることです。

源泉徴収制度

源泉徴収義務の規定されているのは、租税収入の安定化というような類の理由だと思います。
所得税の確定申告による納付期限は、原則3月15日です。源泉徴収制度がなければ、国からしてみれば、この時期にしか所得税の税収がないことになります。
また、全ての人が納税手続きをきちんと行っていればよいのですが、そうでない人がいるのも現実です。
源泉徴収制度を設けることによって、税金の収納時期を分散化し、収納率を高めることができるわけです。

このような背景から、源泉徴収漏れを指摘されると、源泉所得税の納付を余儀なくされることになります。
なお先の例では、税理士報酬の源泉徴収として述べましたが、実際には、「御社には、源泉徴収義務がありますので、源泉所得税を徴収して納付しなければなりません。」と説明をすることが税理士の職務となりますので、税理士に限っていえば、後者の例は、まずありえないのではないかと思います。

では、源泉徴収漏れを指摘されたら、どのようになるかということですが、こちらは「後編」で説明したいと思います。

国外への支払いにも源泉所得税

源泉所得税といえば、給与から差し引かれる税金という認識が最も高いのではないでしょうか。
しかし、源泉所得税は何も給与だけに限ったものではありません。その種類は多岐にわたります。

この度、トヨタ自動車株式会社が源泉徴収漏れを指摘されたとして、報道されていました。
トヨタ自動車株式会社といえば、知らない人がいないのではないかという程の超有名企業で巨大企業ですが、何を指摘されたのかというと、国外の企業に対する知的財産の使用料に対する源泉徴収漏れのようです。

トヨタ自動車株式会社は、「調査の有無や内容については答えられない」としているようですが、報道によると、国外の企業に開発費を支払い、その開発に関する技術やデータの提供を受けていたということで、その部分が知的財産の使用料と認定されたようです。
この詳細や真偽は定かとはなっていないので、事実がどのようになっているのかも分からないのですが、所得税法の観点から見ると、確かにこのような取り扱いが定められています。
つまり、今回の例で言うと、国外企業へ知的財産の使用料の支払いをする場合には、源泉徴収しなさい。ということです。

源泉徴収制度とは

源泉徴収制度ですが、少しややこしく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
話を簡単にするために、会社と従業員で考えてみましょう。

冒頭にもある通り、会社は従業員に給与を支払う際、所得税の源泉徴収をして、納付しなければなりません。
「しなければなりません」とあるように義務となっています。この場合の会社を源泉徴収義務者といいます。

ただ、納付をしているのは、従業員の所得税です。よって、本来の納税義務者は従業員です。

従業員は、通常、会社が行う年末調整で所得税の計算が終了してしまうため、意識をしないことが多いと思いますが、原則的には、従業員それぞれが確定申告をして納税するものです。年末調整という特例によって、こうした手続きをせずに済んでいるわけです。

会社は、従業員の納税手続きを代行していると見ることもできますし、税務署(国)の徴収手続きを代行していると見ることもできます。
源泉徴収義務者は、本来の納税義務者に代わって税金を納付するので、源泉徴収義務者も納税義務者として扱われます。
徴収する義務と納付する義務の2つの義務があることになります。
このため、源泉徴収漏れ、転じて源泉所得税納付漏れとして課税庁に指摘され、納付しなければならなくなるという事態が生じます。

お酒の適正量

10月も半ばとなり、徐々に年の瀬が近づいています。
11月にもなると、早いところでは忘年会が始まるのではないでしょうか。
このような時期を見越してなのかどうかは分かりませんが、お酒にまつわる記事がありました。

その内容は、飲酒をする65歳以上の男性の半数、女性の1/4が、厚生労働省の定める飲酒の適正量以上のアルコールを摂取していることが分かったというもののようです。
退職や配偶者との死別が飲酒のきっかけとなる例もあるようです。

お酒の適正量

厚生労働省は、「節度ある適度な飲酒(量)」として、1日の平均純アルコールの摂取量が約20gであるという知識の普及を目標としています。
これは、男性については1日当たり純アルコール10~19gで、女性では1日当たり9gまでで最も死亡率が低く、1日当たりアルコール量が増加するに従い死亡率が上昇するという研究結果から得られたもののようです。
なお、留意事項として以下の項目が挙げられています。

  • 女性は男性よりも少ない量が適当
  • 少量の飲酒で顔面紅潮を来す等アルコール代謝能力の低い者は、通常の代謝能を有する人よりも少ない量が適当
  • 65歳以上は、より少量の飲酒が適当
  • アルコール依存症者においては、適切な支援のもとに完全断酒が必要
  • 飲酒習慣のない人に対してこの量の飲酒を推奨するものではない

1日平均純アルコールで約20g程度となる主な酒類の換算の目安は以下の通りです。

  • ビール…中瓶1本500ml
  • 清酒…1合180ml
  • ウイスキー・ブランデー…ダブル60ml
  • 焼酎(35度)…1合180ml
  • ワイン…1杯120ml

お酒を飲む人にとっては、なかなか厳しい数字なのかもしれません。
また、やはり時期的なものがあるのかもしれませんが、「アルコール関連問題啓発週間」というものがあり、11月10日から16日がアルコール健康障害対策基本法で定められているそうです。

忘年会というと、会社の打ち上げといったイメージが強いかもしれませんが、忘年会という名目に関わらず、年の瀬が近づくと公私共にお酒を飲む機会が増えます。
「節度ある適度な飲酒」とまではいかなくとも、年齢に関わらず、飲みすぎには気をつけなければならないのかもしれません。

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さいたま市緑区の税理士 渡辺税務会計・KWAT

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関東信越税理士会浦和支部所属

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