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欠損金の繰越控除

欠損金の繰越控除とは、その事業年度の業績が赤字であった場合で、その後の事業年度で業績が回復し黒字となったときにその黒字の金額と赤字の金額を相殺することができる制度です。

赤字の金額(欠損金額)を翌期以降に繰り越して、黒字となったときにその金額から控除するため、欠損金の繰越控除といいます。

この制度は、以前よりありましたが、昨今よく改正されるようになりました。国の財政難のためか縮小傾向にあります。

ただ、縮小傾向となるのは大法人で、大法人は従前より所得の80%まで繰越控除が認められていましたが、2015年度の改正で2015、2016年度については所得の65%、2017年度以降は所得の50%が繰越控除の限度となりました。

これが今回の改正で、2016年度は60%、2017年度は55%、2018年度以降は50%となりました。企業経営の影響を平準化するための見直しということです。
2018年度までの控除限度をみると、旧制度では65+65+50+50=230、新制度では65+60+55+50=230となり、全体の控除率で見れば変わらないのですが、欠損金の生じた年度によっては、影響が出る可能性もあります。

また、繰越控除のできる期間が2015年度の改正では2017年度以後の欠損金は10年となっていましたが、今回の改正でこれが2018年度以後となりました。

昨今の改正で繰越期間も7年→9年→10年と移り変わりました。繰越のできる期間が延長するのは良いのですが、これに伴って帳簿書類の保存期間も10年に延長されます。

繰越控除額に限度が設けられているのは大法人だけですので、中小法人等については欠損金の繰越控除が100%できます。
繰越期間や帳簿の保存期間は、法人の規模に限らず10年となります。

ただし、この制度は2018年(平成30年)4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額から適用されます。
よって、それまでの繰越期間や帳簿の保存期間は9年となります。

少額減価償却資産の損金算入の延長

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度の適用期限が2018年3月31日まで延長されています。

この制度は、「取得価額が30万円未満である減価償却資産で一定のものであれば、減価償却という手続きをしなくても、全額取得した時の経費としていいよ」というものです。
その事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円に達するまでこの制度は使えます。
30万円未満ですので、299,999のものでしたら10個までこの制度が使えます。

この制度を使えるのは中小企業者等に限られています。
中小企業者等とは、中小企業者又は農業協同組合等で、青色申告書を提出するものをいいます。
なお、中小企業者は

  • 資本金の額又は出資金の額が1億円以下
  • その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人に所有されていない
  • その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人に所有されていない
  • 常時使用する従業員の数が1,000人以下

といった要件を満たすものになります。大規模法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。

資本金や出資金のある法人についても今回の改正で「常時使用する従業員の数が1,000人以下」の上限がつくことになりましたが、ほとんどの法人にとっては影響がないのではないでしょうか。

使いやすい制度ですので、延長されたことは素直に喜びたいと思います。

税率の引き下げ|税制改正

2016年度税制改正の中身を見ていきたいと思います。
今回は、法人税率の引き下げです。

政府は「成長志向の法人税改革」を掲げ、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という考え方の下、2015年度に着手した改革を更に推進し、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革するとしています。

この改革の1本目の柱が法人税率の引き下げです。

2016年4月1日以後に開始する事業年度の法人税率が23.4%になりました。以前は23.9%でしたので0.5%の引き下げです。

ただ法人が負担すべき税金は法人税だけではありません。大まかに挙げるだけでも
法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税
とあり、さらにこれらの税が所得割や地方特別法人税などに分かれます。

では、全部ひっくるめて税金はいくらになるのか。誰もが気になるところだと思いますが、これを計算する率があります。

「法人実効税率」といいますが、法人がその期に負担することになる税金の総割合です。

今回の改正でこの法人実効税率も引き下がりました。

2015年度は32.11%でしたが、2016年度では29.97%となり2018年度では29.74%になる予定です。政府が目標に掲げていた法人実効税率20%台を実現する形になりました。

今回の税率の引き下げは成長志向(利益が出ている)の法人を後押しするのはもとより、国際的な事情もありそうです。

財務省が掲載している「国・地方合わせた法人税率の国際比較」では、アメリカ、フランス、ドイツ、中国、韓国、イギリス、シンガポールと日本が比較されていますが、日本の税率はアメリカ、フランスに次いで3番目に高い税率となります。今回の改正で4番目のドイツの税率29.66%には近づく形となりました。

他国と比べて税率が高ければ、国内企業の海外移転の加速し、外国企業の日本への進出を妨げてしまう恐れもあります。

いずれにしても、法人にとっては手元に資金が残る税負担の軽減は素直によろこんでよいのではないでしょうか。

少額減価償却資産

中小企業者等が、30万円未満である減価償却資産を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。

現在、この制度の適用期限は平成28年3月31日までとなっています。

期限の延長が要望として出されていますが、現在は未確定となっています。

法人のみならず個人事業でも適用できる制度ですので、是非、延長が決まってほしいと思います。

くるみん

くるみん」という言葉をご存知でしょうか。

次世代育成支援対策推進法に基づき厚生労働大臣の認定を受ける際の認定マークのことを言います。
次世代育成支援対策推進法とは、次世代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために、国、地方公共団体、企業、国民が担う責務を明らかにすることを目的として、2005年4月1日から施行されています。

この認定を受けると認定マーク(くるみん)を、商呂、広告、求人広告などに付け、子育てサポート企業であることをPRでき、企業イメージの向上、従業員のモラルアップやそれに伴う生産性の向上、優秀な従業員の採用・定着が期待できると国は謳っています。

税制につきましても、優遇措置があります。通称「くるみん税制」です。

内容は、次世代育成支援対策資産の取得について割増償却を認めるというものです。

割増償却とは、その課税期間の減価償却費を割増して、費用計上を前倒しするというものです。その資産について費用化できる総額は通常の減価償却を行う場合と変わりません。

この制度を受けるためには、「くるみん認定」を受けることが前提となります。

くるみん認定を受けるためには、「一般事業主行動計画」の策定し、その策定した目標を達成するなど一定の基準(9項目の認定基準の全て)を満たす必要があります。
一般事業主行動計画とは、従業員の仕事と子育ての両立を図るために策定する計画のことです。
この計画に次世代育成支援対策資産の取得を盛り込み、行動計画期間内に実際に導入します。

上記のことからも分かるように、税制優遇は次世代育成支援対策を推進するための補助的位置づけとされているようです。

また、くるみん認定企業のうち、より高い水準の取組みを行った企業は「プラチナくるみん認定」を受けることができます。プラチナくるみん認定についても別途、割増償却の優遇措置があります。

海外税務情報を提出

グローバル化時代といわれてから年数が経ちますが、いよいよ税務の領域にもその波が押し寄せてきたようです。

政府は2016年度の税制改正で、企業に海外税務関連情報を国税庁に提出するルールを盛り込む方向のようです。企業は国別の収益や納税額、資産などの情報をリポートとして提出しなければいけなくなる模様です。

経済協力開発機構(OECD)が国境を越えた節税策を防ぐために、世界の企業に税務情報の提出を求めるルールをまとめたことが発端となっています。
OECDでは全事業年度の連結売上高が約1000億円以上の企業を対象にするよう求めており、日本政府もこれに対応しようという考えのようです。

既に、個人レベルでは、「国外財産調書」の提出義務が課され、5,000万円を超える国外財産を有する人は、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した「国外財産調書」を税務署に提出しなければなりません。

このような流れは今後加速していくのではないのでしょうか。

公益法人8割徴収漏れ

新聞記事に税制上優遇されている学校法人や社会福祉法人などの公益法人について、東京・大阪国税局が2014年6月までの5年間に、延べ約4000法人を税務調査したところ、対象の82%で源泉所得税の徴収漏れが見つかったとの記事がありました。

企業や個人事業主が大半を占める全体の徴収漏れは対象の26%だったようです。公益法人の不適切な経理処理が際立ちました。

税法上の公益法人は学校法人、社会福祉法人、宗教法人、財団・社団法人などです。公益性が高く儲けが出にくい仕事だからという面で原則は非課税という税制上の優遇措置を受け、公益活動の収入に税金はかかりません。

物品販売などの一部収益事業だけ課税の対象になりますが、役員や職員の給与などにかかる所得税は源泉徴収が義務づけられています。

この原則非課税という点が、税金はかからないという認識の誤りがあったのかもしれませんね。

企業版ふるさと納税

菅官房長官は秋田市で講演で、ふるさと納税制度の企業版を創設することができないか、検討を進めていることを明らかにしました。

ふるさと納税制度は、生まれ育った自治体などに寄付をすると、住んでいる自治体に納める住民税などが控除されるもので、自治体から特産品などが送られてくることから利用が急増しています。

これに関連し、菅官房長官は「今、国は、地方創生に全力で取り組んでおり、官民挙げて連携してまちづくりを応援する。法人住民税を工夫して、企業版のふるさと納税制度があってもいいのではないか」と述べました。

そのうえで、菅官房長官は、「今、財務省や総務省、内閣府に勉強するよう指示している。いろんな知恵を出して工夫しながら地方を元気にしていくのが私たちの役割だ」と述べ、内閣の重要課題である地方創生の実現に向けて、ふるさと納税制度の企業版を創設することができないか、検討を進めていることを明らかにしました。

現行のふるさと納税は、特産品の取得は所得税法上、一時所得となりますが、他に一時所得に該当する所得がなく、特産品の総額が高額(目安は50万円)でなければ処理不要(課税関係は生じません)になります。もし企業が特産品を取得するならば、会計処理が必要になる可能性があります。今後に注目です。

移転価格税制

移転価格税制で納税者の主張が認められたという記事を見ることがあります。

移転価格税制とは

  • 企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)を通常の価格と異なる金額に設定すれば、一方の利益を他方に移転することが可能となる。
  • このような海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度。

この通常の取引価格(独立企業間価格)の算定方法は法律などにも規定されていますが、ざっくりいうと、「特殊な関係にない相手との取引価格と同様かどうか」です。

海外の関連企業(子会社など)との取引が、独立企業間価格かどうかが争点となるようです。海外の関連企業は現地の税制などの優遇措置を受けていることもあるようなので、それらの点を調べて実施している納税者側の主張が認められているということでしょうか。

さいたま市緑区の税理士 渡辺税務会計・KWAT

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関東信越税理士会浦和支部所属

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