帳簿の書き方その3
前回、青色申告の条件を満たす帳簿とは、複式簿記によって記帳された帳簿であると説明しました。
この説明は間違いではないのですが、個人事業においては、記帳方法等が緩和されています。
その前に個人事業における青色申告制度について説明します。
1回目の説明の通り、個人事業者は最大で65万円を利益から控除することができます。
この控除を「青色申告特別控除」と言いますが、「最大で」というのがミソです。
この青色申告特別控除ですが、2種類に分かれます。
- 最高で65万円控除
- 最高で10万円控除
ここで「最高で」としたのは、利益<65万円or10万円の場合は、利益金額の控除になるためです。
つまり、利益が0円となると言うことになります。
この65万円控除と10万円控除にはそれぞれ以下の要件が定められています。
65万円の青色申告特別控除の要件
- 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること
- これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
- 現金主義を選択していないこと
- 上記の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること
10万円の青色申告特別控除の要件
- 65万円控除の要件に該当しない青色申告者
冒頭の青色申告の条件を満たす帳簿は65万円控除を前提に説明しています。
65万円控除の要件を見ると、「正規の簿記の原則により記帳」とあります。これを要約すると、「すべての取引を整然と記録する」という意味になります。
複式簿記ではない簡易な簿記によって作成される帳簿を簡易帳簿といいますが、この簡易帳簿に他の帳簿をプラスして「すべての取引を整然と記録」すれば、65万円控除をすることができます。
簡易帳簿とは
以下のものが標準的な簡易帳簿になります。
- 現金出納帳
- 売掛(売上)帳
- 買掛(仕入)帳
- 経費帳
- 固定資産台帳
これだけでは「すべての取引を整然と記録」することができませんので、預金出納帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、特定取引仕訳帳や特定勘定元帳を必要に応じて記帳することになります。
一部記入例は以下の通りです。
売掛帳
○○商会 | |||||
年月日 | 相手科目 | 内容 | 売上金額 | 受入金額 | 残高 |
9月9日 | 売上 | 商品××10個 | 50,000 | 50,000 | |
9月30日 | 現金 | 現金入金 | 50,000 | 0 |
売上元帳
年月日 | 相手科目 | 内容 | 借方 | 貸方 | 残高 |
9月9日 | 売掛金 | 商品××10個 | 50,000 | 50,000 |
現金出納帳
年月日 | 相手科目 | 内容 | 入金 | 出金 | 残高 |
9月30日 | 売掛金 | ○○商会売掛金 | 50,000 | 50,000 |
特定取引仕訳帳や特定勘定元帳は標準的な簡易帳簿や「~帳」を用意していない取引を記帳します。記帳方法は、複式簿記の仕訳帳や総勘定元帳と同じです。
これを見て、複式簿記と大して変わらないのでは?と思われたのではないでしょうか。
「すべての取引を整然と記録」を目的としますので、結果としては同じになるかもしれません。
ただし、例えば上記の例で、「9月9日○○商会に商品××を10個売った。代金は月末に入金」であれば、9月9日の記帳は、簡易帳簿では売掛帳と売上元帳(特定勘定元帳)の記帳で済みます。複式簿記でいう総勘定元帳に直接記帳していくというイメージに近いのかもしれません。
これに対して、複式簿記では、仕訳帳、売掛金元帳、売上元帳にそれぞれ記帳する必要があります。
上記帳簿の種類や記入例はあくまで一例です。
以上が簡易帳簿を利用して65万円控除を受けるための記帳方法となります。