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年末調整2020(電子化)

年末調整の時期となりました。
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、行動が制限され、新しい様式が模索される中でも等しく時は進み、年末調整は行われます。
「例年と変わりなく」と言いたいところですが、今年の年末調整はひと味もふた味も例年とは異なります。
これについては、新型コロナウイルスの影響というわけではなく、税制改正によって定められた内容が、今年の年末調整から反映されるようになるという、いわば既定路線です。

大きく分けて2つ

例年とはひと味もふた味も異なると申し上げた今年の年末調整ですが、その特徴は大きく分けて2つです。

  • 改正の内容が多い
  • 年末調整の電子化が推進された

改正の内容については、次回以降に取り上げたいと思いますが、今回は年末調整の電子化に焦点を当ててみたいと思います。

年末調整の電子化とは?

正確には、「年末調整手続の電子化」です。
そもそも「年末調整」とは、源泉徴収(給与天引き)された税金と、1年分給与に基づいて改めて計算しなおした税金の差額を精算することを言います。
お金の精算自体は行為ですので、電子化は関係ありません。つまり、この行為に至るまでの手続の電子化ということになります。
では、その手続きといえば、

  1. 事業者が、従業員に記入用紙を配布
  2. 従業員は、用紙記入と共に証明書類を添付して、事業者に返却
  3. 事業者は、これを元に給与システムなどに入力して清算する金額などを計算

となります。
年末調整の電子化とは、この一連の手続きを電子化しようとするものです。

国税庁は力を入れている

現在のところ、年末調整の電子化を行うかどうかは任意ですが、国税庁の力の入れようは疑いようもありません。
無償でアプリの提供を開始しています。
Windows、Mac、スマートフォンそれぞれにも対応しています。
なお、「電子化」して年末調整手続きを行う場合には、事業者において税務署への申請が必要となります。(このアプリを用いても書面にて手続きを行う場合には、申請は不要です。)
では、なぜ国税庁はここまで力をいれているのでしょうか。

やっぱり情報がほしい?

国税庁の使命は、「納税者の自発的な納税義務の履行を、適正かつ円滑に実現します。」とされています。
これだけ見るとピンときませんが、その中身として、「内国税の適正かつ公平な賦課・徴収の実現」が挙げられています。平たく言えば「課税の公平」です。
公平に課税を行うためには、それを判断するための情報が必要になります。

本来の提出先は税務署長

年末調整に係る書類ですが、本来は税務署長に提出するものとなります。
現実は事業者に提出していますが、事業者に提出すれば税務署長に提出されたものとみなすという規定があるためで、本来の提出先は税務署長です。
このような形となっているのは、大量の書類が税務署長に提出されても処理しきれないため、事業者への提出でよいことにしていると言われています。
しかし、電子化となればどうでしょうか。
保管場所も取らず、全てがデータ化されて保管されますので、事業者への提出に留めておく必要がなくなります。
いずれ法改正がなされ、税務署長に提出することになるのではないでしょうか。

マイナンバーで一発検索も可能に!?

電子データとして情報があつまれば、例えばマイナンバーで、対象者の納税額はもちろん、その家族構成、所得、勤め先、加入している保険など、ほぼすべての個人情報を、一発で検索することも可能となります。
電子化の先には、このようなことが想定されているのは、想像に難くありません。
権力のある所に情報が集まり、それを扱うのは一部の人間。
文字にすると恐ろしいことか起こりそうな文章ですが、課税のみならず、全てにおいて適正かつ公平に運用されること願うばかりです。

年末調整のしかた

毎年、年末が近づくと年末調整が行われます。

給与所得者は事業者(会社)から2つの書類に必要事項を書いて提出するよう求められ、事業者は提出された書類の処理について税理士などに委託するか、自身で行います。

年末調整の概略

事業者は、給与などから源泉所得税を差し引いて国に納付します。(事業者は源泉所得税を徴収して納付することが義務化されています。)

その年の最後に給与等を支払う際、各人の所得税額を計算し、以前に差し引いた源泉所得税の合計額と比べて過不足があれば精算します。

所得税は国に納付する税金ですが、給与所得者の場合は事業者が窓口となって行っているという形です。
差し引かれた源泉所得税の合計額>1年分の所得税額となれば、年末の給与等にその分がプラスされて支払われます。その逆の場合はマイナスされます。

給与所得者の方は医療費控除や住宅ローン控除など別途確定申告をする場合を除いて、所得税の手続きは終了します。
事業者に提出する2つの書類は、差し引く源泉所得税の金額の計算や年末の精算をするために必要な資料となります。

今年は様式が異なる

2つの書類と言いましたが、正式には、

  1. 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下「扶養控除等申告書」)
  2. 「給与所得者の保険料控除兼給与所得者の配偶者特別控除の申告書」(以下「保険料控除等申告書」)

と言います。

平成27年の年末調整では、扶養控除等申告書は平成28年分、保険料控除等申告書は平成27年分に記載します。

なぜ平成28年分と平成27年分になるのか疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、扶養控除等申告書は平成28年の給与などから差し引かれる源泉所得税の計算のため、保険料控除等申告書は平成27年の年末調整のためというイメージを持っていただければ分かりやすいのではないかと思います。

さて、今回様式が異なるのは「扶養控除等申告書」です。以下の2つが加えられています。

  1. マイナンバーの記入欄
  2. 非居住者である親族に関する情報欄

扶養控除等申告書

1つずつ解説していきます。

マイナンバーの記入欄

その名のままですが、マイナンバーを記入する欄です。自身のみならず、扶養する親族等のマイナンバーも必要となります。なお、扶養親族等の本人確認は給与所得者自身が行うことなっています。とはいえ家族の本人確認?となると思いますので実際には扶養親族等のマイナンバーを確認して記入することになると思います。

ここで注意が必要なのですが、マイナンバーの記入が必要になるのは「扶養親族等」であり、「家族」ではありません。
扶養親族等≠家族です。

便宜上、扶養親族等としていますが、ここには控除対象配偶者も含めています。

どのような人が対象になるのかというと、大雑把ですが、「収入がない方、又は少ない方」が対象になります。
「少ない方」とは、例えば、その年の収入が給与のみなら103万円以下、公的年金のみ(65歳未満)であれば108万円以下の方が該当することになります。
この他に生計を一にすること、事業専従者でないことなど、いろいろ要件があります。
詳しくは国税庁のホームページで説明されていますので、ご参照ください。

マイナンバーを記載した扶養控除等申告書は今まで以上に、安全管理上重要な書類となりますので、その取り扱いには充分な注意が必要になります。
また、記入した内容が事実と異なる場合、計算した税額に影響を及ぼす可能性があります。

非居住者である親族に関する情報欄

マイナンバーと比べこちらはメディア等でも取り上げられていないので、ご存じない方も多いのではないかと思います。

これは、非居住者である親族(以下「国外居住親族」といいます。)について扶養控除等の適用を受ける場合に記入等が必要になります。

「非居住者」とは、居住者以外の個人をいいます。また、「居住者」とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。
したがって例えば、国外へ留学をしている親族、日本で働いている外国人の母国にいる親族などが対象に挙げられます。
親族の全員が国内で生活しているような場合には、関係ありません。

国外居住親族について扶養控除等の適用を受ける場合には、扶養控除等申告書への記載とともに以下の書類が必要になります。

  1. 親族関係書類
  2. 送金関係書類

扶養控除等申告書に記載した者が親族であること、そして扶養していることの証明が必要になるということです。

親族関係書類

次のいずれかの書類で、その非居住者がその居住者(給与所得者)の親族であることを証するものをいいます。

  1. 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及びその親族の旅券(パスポート)の写し
  2. 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(その親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)

送金関係書類

次の書類で、その居住者(給与所得者)がその非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。

  1. 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引によりその居住者(給与所得者)からその親族に支払をしたことを明らかにする書類
  2. いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、そのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその親族が商品等を購入したこと等及びその商品等の購入等の代金に相当する額をその居住者(給与所得者)から受領したことを明らかにする書類

※「親族関係書類」、「送金関係書類」が外国語により作成されている場合には、その訳文も提出又は提示する必要があります。

記入方法

国外居住親族について扶養控除等の適用を受けようとする場合には、通常と同じく氏名や住所などを記入したうえ、「非居住者である親族」欄に「○」を記入します。
事業者等に提出する際に親族関係書類の提出又は掲示が必要になります。

平成27年分の年末調整での処理はこれで終了です。

翌年、平成28年分の年末調整の際には、平成27年の年末調整の際に提出した平成28年分扶養控除等申告書の「生計を一にする事実」欄にの国外居住親族に対する送金額等を記載した上で再提出し、「送金関係書類」の提出又は提示が必要となります。
実際にはマイナンバーの記載された扶養控除等申告書を用いてやりとりをするのか疑問が残るところではありますが、少なくとも、送金関係書類は必要となりますので、年を通じてその管理や保管が必要になります。

公益法人8割徴収漏れ

新聞記事に税制上優遇されている学校法人や社会福祉法人などの公益法人について、東京・大阪国税局が2014年6月までの5年間に、延べ約4000法人を税務調査したところ、対象の82%で源泉所得税の徴収漏れが見つかったとの記事がありました。

企業や個人事業主が大半を占める全体の徴収漏れは対象の26%だったようです。公益法人の不適切な経理処理が際立ちました。

税法上の公益法人は学校法人、社会福祉法人、宗教法人、財団・社団法人などです。公益性が高く儲けが出にくい仕事だからという面で原則は非課税という税制上の優遇措置を受け、公益活動の収入に税金はかかりません。

物品販売などの一部収益事業だけ課税の対象になりますが、役員や職員の給与などにかかる所得税は源泉徴収が義務づけられています。

この原則非課税という点が、税金はかからないという認識の誤りがあったのかもしれませんね。

源泉所得税

今月の10日は源泉所得税の納付期限となっています。

源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限となっていますが、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を提出することにより、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税について、年2回にまとめて納付できる制度があります。具体的な期間と納付期限は次の通りです。

1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・7月10日

7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・翌年1月20日

半年分を納付することになりますので、税額が多くなりがちです。

期限を過ぎてしますと納付すべき税額を基礎に計算した不納付加算税という罰金税が課される可能性がありますので注意が必要です。

さいたま市緑区の税理士 渡辺税務会計・KWAT

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