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消費税、任意の中間申告制度

消費税の申告制度の中に「任意の中間申告制度」というものがあります。

言葉の通り、「任意」に申告をするものなのですが、どのようなものか見てみましょう。

中間申告制度とは

消費税では税金を計算する期間を課税期間といいますが、原則、税金の支払は一課税期間につき一回です。

しかし、所得税や法人税の申告納付制度に予定納税(中間申告)制度があることや消費税が預り金のような性格をもっていることなどを考慮して、直前の課税期間の確定消費税額に応じて、現在進行中の課税期間の消費税を前払いする中間申告制度が消費税にも設けられています。

「直前の課税期間の確定消費税額に応じて」とあるように、その金額に応じて申告すべき回数が以下のようになります。

直前の課税期間の確定消費税額 中間申告回数
4,800万円超 年11回
400万円超 年3回
48万円超 年1回

上記の表に該当する場合には中間申告をし、税金を納めなければなりません。つまり義務です。
しかし、直前の課税期間の確定消費税額が48万円以下場合は中間申告及び納付の義務はありません。

そこで、「任意の中間申告制度」となるわけです。

わざわざ義務もないのに申告をして、納付をする人がいるのかと思ってしまいますが、この制度が作られた趣旨は「消費税を納付するための資金繰り管理等の観点から任意に中間申告・納付することを認めて欲しいとの声が中小企業団体等から寄せられていたことを踏まえて・・・。」と解説されています。

手続きが必要

任意の中間申告をするためには手続きが必要です。

中間申告を行おうとする課税期間開始の日から6月以内に「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

期限までに納付しないと延滞税

「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を提出し、自主的に行うこととなる任意の中間申告ですが、期限までに納付をしないと延滞税が課される場合があります。

なお、自主的に納付をしたからといって税額が安くなったりはしません。

安倍首相、消費税増税再延期を表明

先日、安倍首相が記者会見で、消費税率の10%への引き上げ時期を2019年10月まで2年半延期すると表明しました。

税理士という職業柄、題材にしないわけにはいかないですね。

世界経済が大きなリスクに直面しているなどというのが延期の理由でした。
振り返れば、先の伊勢志摩サミットでも消費税増税延期に向けた布石が打たれていたのではないかと思われます。

秋の臨時国会に消費税増税の延期法案を提出する予定のようです。
この臨時国会より前に行われる参院選で増税先送りの判断について国民の信を問うとしているようです。選挙結果によってはまた何かしらの動きがあるのでしょうか。

今回の10%への増税は、軽減税率の導入も盛り込まれていましたので、当初の予定であった2017年4月の増税に合わせて準備を進めていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際に軽減税率対策補助金といった複数税率対応レジの導入や、受発注システムの改修などを行う経費の一部を補助する制度も始まっています。複数税率対応レジを今購入したとしても、延期が決まればその機能を利用するのは3年以上も先になってしまいます。

また経過措置の問題もあります。

元々、消費税率が5%から8%へなった際にとられた措置ですが、簡単に言えば、指定日より前に消費税率8%の適用開始日以後に売上となる契約をした場合は、消費税率は5%が適用されるなどといったものです。

この経過措置は8%から10%へなる際にも適用され、当初予定の2017年4月の10%適用開始の指定日は2016年10月1日でしたので、秋の臨時国会で増税延期が決定するのであれば、これより前に決定しなければならなく、それほど余裕はないのではないでしょうか。

消費税は全ての人に関わる税金ですので、その影響はとても大きくなります。

消費税価格転嫁等対策

内閣府より「消費税価格転嫁等総合相談センターの4月相談対応状況(お知らせ)」が公表されました。

2014年4月より消費税率が5%から8%になったことに伴い、消費税増加分の減額、買い叩きや商品購入などの要請、本体価格での交渉の拒否、報復行為をなくすための対策が講じられ、8%となった2014年4月の半年前の2013年10月より「消費税転嫁対策特別措置法」が施行されています。

2017年4月には消費税率は10%になる予定となっていることもあり、この法律の有効期限は2018年9月30日までとなっています。

消費税率が8%になってから2年以上が経ちますが、引き続きこの対策は行われ、毎月の相談対応状況が公表されています。
2016年4月1日から30日までの相談件数は87件で、その40%が総額表示等に関する相談となっていました。転嫁拒否等に関する相談は22%でした。

一番相談の多かった「総額表示」についてですが、元々、消費税法では、「消費者に対して商品やサービスを販売する場合にあらかじめ価格を表示するときは、税込価格を表示しなければならない」こととなっています。
簡単に言ってしまうと、スーパーなどの値札は税込価格で表示しなければならないということになります。

ただ消費税率が5%から8%となり、10%へなろうとするなか、この「税込価格」で表示していると、その都度値札を変えなければならなくなり、コストや手間が増えることになります。
そのため、2018年9月30日までは、「税抜価格」で表示しても良いことになっています。これが「総額表示義務の特例」です。
具体的には

○○円(税抜き) ○○円(税別) ○○円(本体) ○○円+税
○○円(税抜価格) ○○円(税別価格) ○○円(本体価格) ○○円+消費税

といった表示となります。

どうなる消費税

2016年度の税制改正も決まり、税理士としても本格的に新税制に対応していかなければならないところですが、まだ動向を注視しなければならないこともありそうです。

ずばり言ってしまえば消費税関連です。経緯をおさらいしてみます。

「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(以下、「税制抜本改革法」)により、2014年4月1日から消費税率が8%となりました。
このとき既に2015年10月1日には、消費税率が10%となることも決まっていましたが、経済状況等を総合的に勘案するといういわゆる「景気判断条項」がつけられていました。

そして、2015年度の税制改正で消費税率10%への引き上げ時期は、2017年4月1日に変更されるとともに、景気判断条項も削除されました。
これによって2017年4月1日には確実に消費税率は10%となるとされていました。

消費税率が10%になるということで、低所得者に配慮する観点から、2017年4月1日より

  • 「酒類・外食を除く飲食料品」
  • 「週2回以上発行される新聞の定期購読料」

を対象に消費税の軽減税率制度を導入し、税率を8%とすることに決まったのが、今回の2016年度税制改正です。

今回の改正は単なる税率変更とは異なり、複数税率となるため、その準備などには相当の費用や時間が必要になります。

しかし、この時期になって当初の予定通り消費税率が10%となるのかという点に、懐疑的な見方が持ち上がっています。

もし消費税率が10%にならないとしたら、軽減税率という概念もなくなってしまうので、今回の税制改正で決定したことも延期や廃止ということになる可能性が高いのではないでしょうか。

今回の消費税関連の変更は社会システムが変わるといっても過言ではありません。
当初の変更予定からすれば、期限は1年を切っており、経過措置を考えれば半年を切っています。

既存の準備をしつつも、注視するといった心構えが必要になりそうです。

消費税の不正還付

消費税の不正還付が2年連続で増加しました。
昨年6月までの1年間の不正還付は全国で726件あったそうです。

なぜ消費税の不正還付が横行してしまうのでしょうか。これには消費税の課税上の性質が関係しています。

消費税以外の税金、例えば法人税や所得税は所得(簡単にいえば利益)に対して税金が課されます。これらの税目についても還付はありますが、そのほとんどは前払いした税金の精算というものがほとんどです。要は「正確に計算したら払いすぎていたからその分戻してね。」というものです。給与所得者が行う医療費控除や住宅ローン控除よる還付申告はまさにこれに当たります。

これに対して消費税は、消費に対して税金が課せられます。消費というと分かりにくいかもしれませんが、簡単に言ってしまえば、物の購入です。物を買ったら消費税がかかる…。これがなぜ還付に結びつくのでしょうか。

これを理解するためには消費税の特徴を2つ知らなければなりません。

  1. 消費税が課されるのは国内における消費であること
  2. 消費税の納付者は事業者、最終負担者は消費者であること

この2点で1番わかりやすいのは輸出です。

日本国内で商品を購入して輸出販売した場合、国内における消費ではないので、この商品には消費税がかかりません。また、最終負担者もいないことになります。
ただ、輸出しようとした商品を購入したときに消費税を払っているはずです。この消費税が還付の対象となります。

こういった消費税のシステムを悪用して還付を求めるのが不正還付です。消費税率が8%となったことに伴い不正件数も増加したようです。この不正還付を防止するために様々な措置がとられており、国税庁では、「税務調査の重点事項」の一つに挙げています。

レジ補助金

経済産業省は消費税の軽減税率導入に向けてレジの改修や買い替えを支援する補助金を設ける方針です。
経済産業省所管の中小企業基盤整備機構が近く具体的な内容を発表する予定のようです。

2017年4月に税率10%の消費税が予定されていおり、政府は既に996億円の関連予算を確保しています。
そのような中、こうした具体的内容の発表となると、いよいよ新税率の導入が現実味を増してきたように思えます。

新税率の導入と共に軽減税率も導入される予定ですので、消費税率は10%と8%の2種類となります。
既存のレジでは、2種類の税率に対応できなくなりますので、レジの改修や買い替えが余儀なくされます。

半ば強制的な支出のため、今回の補助金が設けられましたが、対象は中小企業者、1事業者あたり費用の2/3まで、最大200万円までと制限が設けられるようです。

軽減税率導入を定めた税制改正の関連法案が今月末に成立する見通しとなっていることもあり、事業者の申請を4月から受け付ける予定だそうです。
具体的な発表はまだなので詳細は分かりませんが、予算がついている以上、予算額に達するまでの制度になることが予想されます。

ただ、今回の補助金は費用の2/3までとなっていますので、自己負担部分が必ず生じます。未だに新消費税率の導入は難しいのではという声もありますので、もし仮に導入延期となった場合には、補助金を利用した場合でも当面は必要のなかった負担を自己が負うことになります。

ネット配信の消費税

「10月から変わります」で紹介しました「インターネット等を介して行われる電子書籍・音楽・広告の配信などの消費税の課税方法」を取り上げたいと思います。

以前のブログでも少し紹介しましたが、改めて内容を整理したいと思います。

改正される取引

インターネット等を介して行われる電子書籍・音楽・広告の配信などを「電気通信利用役務の提供」と言います。
通信そのものや電気通信回線を介して行う行為が他の資産の譲渡等に付随して行われるものは電気通信利用役務の提供に該当しません。

どのように変わるのか

国外の事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合に変わります。
国内の事業者から役務の提供を受けた場合は今までと同じです。

国外の事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合

消費税の申告はその電気通信利用役務の提供が事業者向けか消費者向けかによって次の方法で申告を行います。

  • 事業者向け…リバースチャージ方式による申告
  • 消費者向け…通常方式による申告

事業者向け、消費者向け両方の電気通信利用役務の提供を受けている場合には両方の方式を使います。

この「事業者向け」「消費者向け」ですが、自身が事業者だからといってイコール「事業者向け」とはなりません。
事業者であっても「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けるということがあるということです。

上記の申告の方式については税理士に任せればよいでしょう。

登録国外事業者でないと控除できない

今回の改正でもっとも注意すべきことは、消費者向けの電気通信利用役務の提供をした国外事業者が登録国外事業者か否かです。

国外事業者が登録国外事業者でなければ、その国外事業者に支払った電気通信利用役務の提供の対価に係る消費税部分は消費税の計算上控除されないからです。同じものを購入したのにもかかわらず、購入先によって税額控除の可否が決まります。

登録国外事業者は国税庁のホームページで確認できます。

消費税の軽減税率

平成29年4月から消費税率が10%となります。

この負担増加を軽減させるため、一部の商品などに対して税率の負担を低くするいわゆる「軽減税率」が検討されています。
現在の検討案は以下の通りです。

軽減税率の対象は?

酒類を除くすべての飲料と食料品

導入方法は?

マイナンバー制度で交付される「個人番号カード」に購入金額を記録し、あとから増税分を還付する

まだ検討案のため、今後どのようになるかは分かりませんが、この方法よれば、適用を受けようとする人は「個人番号カード」の取得が必須となります。
現行のマイナンバー制度では、10月以降に交付されるのは「通知カード」で、「個人番号カード」の取得は任意となっています。
今後、「個人番号カードの利用で・・・」というような、政策や行政サービスが増えてきそうですね。

総額表示義務の特例

消費者に対して商品やサービスを販売する場合において、あらかじめ価格を表示するときは税込価格を表示しなければなりません。これを「総額表示義務」といいます。

しかし、消費税率が8%になり、平成29年4月には10%になるため、税込価格で表示する場合は値札の変更など負担がかかります。
この負担を軽減するため、平成30年9月30日までは「税抜価格」でもよいこととされています。
これを「総額表示義務の特例」といいます。表示方法は以下の通りです。

個別に明示する場合

以下のように「税抜き」など価格の傍らに表示します。

○○円(税抜き) ○○円(税別) ○○円(本体) ○○円+税
○○円(税抜価格) ○○円(税別価格) ○○円(本体価格) ○○円+消費税

○○円(税込××円)とすることも可能です。この場合、税抜価格と税込価格が誤認されないようにすることが必要です。

一括して明示する場合

個別の値札等については「税抜価格」のみを表示し、消費者が商品等を選ぶときに目のつきやすい場所に、「価格は全て税込表示です。」というような掲示をおこなう。

消費税率が10%になるまではまだ期間がありますが、8%のときに対応されていない場合には一考してみてはいかがでしょうか。

電気通信利用役務の提供

前回、「電気通信利用役務の提供」について、消費税の取り扱いが変わります。といいましたが、その概略を説明します。

電気通信利用役務の提供とは、インターネット等を介して行われる電子書籍・音楽・広告の配信などを言います。

今までは、消費税の課税判定の対象が役務の提供をした者(売り手)にあったのですが、10月1日から役務の提供を受けた者(買い手)になります。

これにより、売り手が国外事業者、買い手が国内事業者である場合には今までと異なる取り扱いをします。

また、売り手の国外事業者が「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行っているか否かにより、買い手の国内事業者の申告・納税の処理が変わってきます。

事業者向け電気通信利用役務の提供については、リバースチャージ方式という課税方法をとります。

上記以外の役務の提供「通称(消費者向け電気通信利用役務の提供)」については、その事業者が登録国外事業者かどうかにより取り扱いが変わります。

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さいたま市緑区の税理士 渡辺税務会計・KWAT

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