はずれ馬券の経費性・前編
衆議院議員選挙が終わると共に、国民審査も終わりました。
審査の結果、対象の裁判官の全員が信任される結果となりました。
最高裁判所の判断が税金についても影響を及ぼすことは以前も述べたとおりですが、今回はその一例を見てみたいと思います。
原則は一時所得
裁判の判決を見る前に、まず原則の取り扱いを確認したいと思います。
勝馬投票券(当たり馬券)の払戻金による収入は、一時所得です。
一時所得とは、所得税法の所得の区分で、例えば給与収入は給与所得、事業収入であれば事業所得など、収入の内容によって区分されます。
ちなみに一時所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」というように定められています。
所得税は所得に課税される税金です。
給与所得であれば給与所得控除額、事業所得であれば必要経費というように、収入金額から控除されるものがあります。
一時所得はというと、「その収入を得るために支出した金額」が収入から控除されます。
ただ、この「その収入を得るために支出した金額」ですが、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。」とされています。
このため、当たり馬券の払戻金に当てはめると、当たり馬券の購入金額が「その収入を得るために支出した金額」ということになります。
つまり、はずれ馬券の購入費は、収入金額(払戻金)から控除できない。ということです。
判決は雑所得
一時所得が原則である当たり馬券の払戻金が、雑所得に該当するという判決が下りました。
雑所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得」です。
一時所得との大きな違いは、「必要経費」が収入から控除できる点です。
「必要経費」については別に定めがありますが、今回の件でいうと、はずれ馬券の購入費も「必要経費」に含まれることになります。
この違いは大きく、判決が下された当初、雑誌や新聞などメディアで大きく報道されていましたので、ご記憶にある人もいらっしゃるのではないでしょうか。
あくまでも事例判決?
今回の判決は、馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定等に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていたということで、通常の当たり馬券の取り扱いとは異なり、事例判決、つまり今回の事例に限った判決という見方が強くあります。
実際この判決により、所得税基本通達が改正されましたが、その内容も、判決内容に沿ったものは雑所得、それ以外のものは一時所得というようなものになっています。
当たり馬券の払戻金は原則一時所得、ただし特定の場合には雑所得。
というのが現状です。