「時効の中断」は、中断しない?
2017年6月2日に公布となりました新民法。
実際に運用開始となる施行日は「公布の日から起算して3年以内の政令で定める日」とされていますので、遅くとも2020年の半ばには新民法が施行されます。
民法はすべての人に影響のある法律といっても過言ではありませんので、無関心というわけには行きません。
むしろ税理士という職業柄、お客様は事業を営まれている方が大半であり、自分自身も事業を営んでいることになりますので、民法との関わりは深いほうになるのではないでしょうか。
そのようなこともあってか、実際にこの民法の改正をふまえた研修などが開催されていたりもします。
改正されるといっても、現状の民法は改正前の旧民法です。
この旧民法には、「時効の中断」というものがあります。
「中断」と聞くと、例えば、「試合が雨で一時中断となりましたが、再開です。」というようなアナウンスにもあるように、一定時点で止まって、再び始まるというような認識ではないでしょうか。
しかし、旧民法の「時効の中断」は、そうではありません。
旧民法第157条に「中断後の時効の進行」という条文がありますが、
「中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。」
と定められています。
「新たにその進行を始める」。つまり、一から始まるということです。
ゲームをされる人にとっては分かりやすいかもしれませんが、セーブではなく、リセットということになります。
民法は明治29年にできた法律ですが、その時代の言い回しなのか、法律上の言葉の使い方なのか、本来正しい日本語の表現方法としてはこのような使い方になるのかは分かりませんが、現在の一般的な感覚からしてみれば理解しづらいのではないでしょうか。誤解が生じる恐れさえあります。
このようなこともあってか、新民法では「中断」という言葉は用いられず、「完成猶予及び更新」というタイトルになっています。
なお、リセットとなる取り扱いは以前と同様となります。