はずれ馬券の経費性・後編


引き続き、はずれ馬券の経費性についてです。
最高裁判所の判決で、この事件については雑所得とされ、はずれ馬券について経費性が認められることとなりました。
納税者と課税庁のそれぞれの主張はどのようなものだったのでしょうか。

争点は2つ

今回の裁判での争点は2つあります。

  • 一時所得か雑所得か
  • 雑所得にあたる場合の必要経費の該当性

です。以下、この2つについてご紹介していきたいと思います。

一時所得か雑所得か

前編でもご紹介しましたが、一時所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」というように定められています。

この定めのうち、当たり馬券の払戻金が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であるかどうかが、今回の事件における一時所得か雑所得かの争点になります。
最高裁判所の判決は、高等裁判所の判決があり、これに対して検察側の最高裁判所に対する事件受理の申し立てが受理された後のもとのなりますので、以下原判決と検察の主張となります。

  1. 回数、頻度などの購入態様
    • 原判決…行為の本来の性質だけではなく、行われる回数や頻度等の反復性及び規模に関する事情を考慮に入れるべき
    • 検察…一時的、偶発的な所得であるか否かという所得の本来的性質を本質的な要素として判断されるべき
  2. 競馬の賭博としての性質
    • 原判決…賭博であっても回数、頻度などによっては雑所得に該当することは承認される
    • 検察…賭博の性質を有する競馬を資産運用的な行為と見ることができない
  3. 一般的な馬券購入との区別
    • 原判決…一般の馬券購入行為とは態様が異なることを認定し得る資料があるから、課税実務において雑所得と判断するのに困難は生じない
    • 検察…一般の馬券購入との区別が不明確になり、課税実務に困難が生じる
  4. 担税力への配慮
    • 原判決…負けた結果は除外して課税することは実質的な担税力に応じた公平な課税の観点からは問題がある
    • 検察…課税の公平の観点から不当である

雑所得にあたる場合の必要経費の該当性

  • 原判決…払戻金を得るために直接に要した費用に当たり、必要経費に該当
  • 検察…当たり馬券の払戻金に対応する費用は当たり馬券の購入代金のみ(そもそも一時所得としての主張)

ざっと、このような形になります。

最高裁判所の判決

上記の争点についての判決は以下の通りです。

一時所得が雑所得か

  • 所得や行為の本来の性質を本質的な考慮要素として判断すべきであるという解釈がされていたとは認められない
  • 所得区分の判断については、所得税法の趣旨、目的に照らし、所得及びそれを生じた行為の具体的な態様も考察すべき
  • 画一的な課税事務の便宜等をもって一時所得に当たるか雑所得に当たるかを決するのは相当でない

として、雑所得と判断されました。

雑所得にあたる場合の必要経費の該当性

本件においては、はずれ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するのであるから、はずれ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができ、はずれ馬券の購入代金は必要経費に当たると解するのが相当と判断されました。

それぞれの主張や、最終的な判決はこのような内容となりましたが、前編でも述べたとおり、この判決は事例判決という見方が強くあります。

「当たり馬券の払戻金は原則一時所得、ただし特定の場合には雑所得」

という現状は、前編でもご紹介したとおりです。

さいたま市緑区の税理士 渡辺税務会計・KWAT

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