相続税、海外資産課税強化検討へ
海外にある資産について、相続税の課税対象を広げる方向で検討されているようです。
現行の制度では、日本に住所がない日本国籍を有する個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合、本人とその被相続人が、相続の開始前5年以内に日本に住所がなければ、海外にある資産については日本の相続税が課されないことになっています。
このため、海外に資産を持つ富裕層の中には、相続税がないシンガポールなどの海外に資産を移して5年を超えて暮らすことで、相続税課税を免れる。といった現状があるようです。
このような現状が着目されたのか、財務省は現在の制度を抜本的に見直し、課税を強化する考え。と報道されています。
相続開始前の日本に住所がない期間を5年から10年に延長するなどの案が検討されているようです。
富裕層の資産の海外移転や海外移住が注目されるようになったのは、昨年の相続税の基礎控除額の切下げも多少の影響を及ぼしているように思えます。
相続税の基礎控除の切下げは、切下げ前の制度下では納税義務が生じなかったものが、切下げにより納税義務が生じる可能性がある。というところに注目が集まっていました。今まで縁のなかった相続税の話が、突然、身近な問題になったためです。
ただ、基礎控除額の切下げはすべての人に適用されますので、切下げ前の制度下でも既に相続税が発生することが確定していた富裕層についても影響を及ぼします。
もし、昨年の相続税の改正が影響を及ぼしているとしたら、
相続税法改正⇒富裕層が海外移転⇒今回の課税強化を検討
という図式が成り立ちます。
まさしく、いたちごっこということになります。
富裕層は文字通りお金持ちですので、行動をすぐに起こすことができます。そのため、その行動結果によりさらなる課税策が考えられるわけですが、その課税策がすぐに行動を起こすことができない一般層にも影響することがあります。
その結果、一般層にとっては、課税策が積み上がっただけという結果になってしまうこともありそうです。
今回の報道ではもう1つ、仕事のため一時的に日本で暮らす外国人が日本で亡くなり、残された家族が本国にある資産を相続する場合、日本の相続税がかかるという現行の制度について、滞在が短期間にとどまる外国人は課税の対象から外すことを検討していることも取り上げていました。
現状の制度化では、日本に転勤するのをためらう外国人もいるということが背景にあるようです。
この2つを見ると、課税の公平性をきちんと考えていますよ。という副次的なメッセージを感じてしまいます。
さいたま市緑区の税理士 渡辺税務会計・KWAT
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関東信越税理士会浦和支部所属
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