Category Archives: 税制改正

どうなる消費税

2016年度の税制改正も決まり、税理士としても本格的に新税制に対応していかなければならないところですが、まだ動向を注視しなければならないこともありそうです。

ずばり言ってしまえば消費税関連です。経緯をおさらいしてみます。

「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(以下、「税制抜本改革法」)により、2014年4月1日から消費税率が8%となりました。
このとき既に2015年10月1日には、消費税率が10%となることも決まっていましたが、経済状況等を総合的に勘案するといういわゆる「景気判断条項」がつけられていました。

そして、2015年度の税制改正で消費税率10%への引き上げ時期は、2017年4月1日に変更されるとともに、景気判断条項も削除されました。
これによって2017年4月1日には確実に消費税率は10%となるとされていました。

消費税率が10%になるということで、低所得者に配慮する観点から、2017年4月1日より

  • 「酒類・外食を除く飲食料品」
  • 「週2回以上発行される新聞の定期購読料」

を対象に消費税の軽減税率制度を導入し、税率を8%とすることに決まったのが、今回の2016年度税制改正です。

今回の改正は単なる税率変更とは異なり、複数税率となるため、その準備などには相当の費用や時間が必要になります。

しかし、この時期になって当初の予定通り消費税率が10%となるのかという点に、懐疑的な見方が持ち上がっています。

もし消費税率が10%にならないとしたら、軽減税率という概念もなくなってしまうので、今回の税制改正で決定したことも延期や廃止ということになる可能性が高いのではないでしょうか。

今回の消費税関連の変更は社会システムが変わるといっても過言ではありません。
当初の変更予定からすれば、期限は1年を切っており、経過措置を考えれば半年を切っています。

既存の準備をしつつも、注視するといった心構えが必要になりそうです。

2016年度税制改正

2016年度(平成28年度)税制改正に関する法案が2016年3月29日に国会で可決・成立しました。

この法案は2016年2月5日に閣議決定され、国会に提出されたものですので、2ヵ月近く審議されていたということになるのでしょうか。
なお、公布日は3月31日、施行日は特段の定めのあるものを除いて4月1日ですので、既に新しい法律による運営がされています。

以前、税制改正大綱が決定された際に概要をまとめてみましたが、正式決定ということで改めてまとめてみたいと思います。

法人課税

  • 税率の引下げ
  • 生産性向上設備投資促進税制について、期限どおりに縮減、廃止
  • 減価償却の見直し
  • 欠損金繰越控除の更なる見直し
  • 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
  • 復興を支援するための措置

消費課税

  • 軽減税率制度の創設
  • 外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充

個人所得課税・資産課税

  • 三世代同居に対応した住宅リフォームに係る特例
  • セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の創設
  • 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
  • 個人の寄附税制の包括的な見直し

国際課税

  • BEPSプロジェクトを踏まえた多国籍企業情報の報告等に係る制度の整備
  • 日台民間租税取決めに規定された内容を実施するための国内法の整備

納税環境整備

  • 国税のクレジットカード納付制度の創設
  • マイナンバー記載の対象書類の見直し
  • 加算税の加重措置の導入

やはり、今の時点での最大の関心事は消費税の軽減税率制度でしょうか。
各項目の詳細については、また改めて紹介できればと考えています。

MRF

「日銀が、MRFをマイナス金利適用外に。」
何のことやら。と思った方も多いのではないでしょうか。

そもそもMRFとは

MRFとはマネー・リザーブ・ファンドの略で、分類としては投資信託の一種になります。

株式投資などを行う場合、証券会社に口座を開設し資金を入金しますが、この入金先がMRFになっていることが多いです。
MRFは国債などの比較的安全とされる資産に運用され、その運用によって得た利益を分配金という形で投資家に還元します。

投資家からしてみれば、資金を自由に出し入れでき、利息(正確に言えば、分配金)を受け取ることができるので、投資家に対する普通預金といわれることもあるようです。

ただ、あくまでもMRFは投資信託の一種ですので、普通預金とは違い元本割れのリスクがあるということを忘れてはいけません。

投資促進?

日銀の当初のマイナス金利政策により、MRFの運用先である国債などの利回りが低下することになりました。
加えてこのMRFに係る資金も日銀の当座預金預入れの対象で、本来ならマイナス金利が適用となる部分があるはずでしたが、冒頭のように適用除外となりました。

日銀の黒田総裁は、MRFの安定運用を支えることが、個人の株式投資などを通じた運用資産見直しの進展につながると説明しています。
貯蓄から投資へという方針は未だ健在ということでしょうか。

新税制が始まっています。

こうした紆余曲折のあったMRFですが、2016年1月から税金に関する取り扱いが変わっています。

2015年までMRFは、その譲渡益は非課税(譲渡損はないものとみなされます。)、分配金は源泉分離課税(預金の利息と同じ取り扱い)となっていましたが、2016年1月から上場株式等と取り扱いが統一されます。

つまり、源泉徴収ありの特定口座では申告不要が選択できますが、源泉徴収なしの特定口座(簡易口座)や一般口座では確定申告が必要となります。

通勤手当

2016年度の税制改正大綱が閣議決定されています。

今後、この大綱を基に国会で可決決定され、新たな税制が施行されるわけですが、この大綱の中に2016年1月1日から遡って適用することとされているものがあります。

今回はその中の1つ、通勤手当の非課税限度額を取り上げます。

通勤手当などとして会社などから支給される場合、今までは最高で1か月当たり10万円まで所得税と住民税は非課税とされていました。

この10万円が15万円までに引き上げられます。

新幹線などの交通網の発達で遠方からの通勤が増えていることに対応するとともに、人口の都市一極集中を緩和させる狙いもあるようです。

東京からは、東北新幹線で那須塩原、東海道新幹線で静岡、上越新幹線で越後湯沢までの1か月定期代が15万円以内となり、非課税枠内に収まるようです。

15万円(現状では10万円)を超えてしまう場合には、その超える部分の金額が給与として取り扱われ、所得税・住民税が課されます。
また、新幹線などの特急急行料金は非課税の対象となりますが、グリーン車などの料金は対象外です。

国会で可決決定されれば、遡って適用となるものですので、今まで10万円を超えた部分が給与として課税されていた人が最も恩恵を受けることができるのかもしれません。

税制改正大綱その2

自由民主党と公明党の連盟で平成28年度税制改正大綱が発表されています。

120ページにも及ぶ内容ですので、読んで理解するには相当の時間がかかります。

この大綱の冒頭に今回の税制改正の主要項目と今後の税制改正に当たっての基本的考え方が紹介されていますので、タイトルだけでもご紹介したいと思います。

  1. デフレ脱却・日本経済再生に向けた税制措置
    1. 成長志向の法人税改革
      1. 法人実効税率「20%台」の実現
      2. 法人税制をめぐる諸課題
    2. グローバルな投資・経済交流の促進
    3. 地域の中小企業による設備投資の支援
  2. 少子化対策・女性活躍の推進・教育再生等に向けた取組み
    1. 少子化への対応、働き方の選択に対する中立性の確保等の観点からの個人所得課税の見直しに向けた検討
    2. 三世代同居に対応した住宅リフォームに係る特例の導入
    3. 個人寄附に係る寄附金税制の見直し
    4. 社会保障関連の税制上の措置
      1. セルフメディケーションの推進
      2. 介護保険料等に係る社会保険料控除の見直しに向けた検討
  3. 地方創生の推進・特区に係る税制上の支援措置
    1. 地方法人課税の偏在是正
    2. 東京圏への人口集中の是正・各地域での住みよい環境の確保
      1. 地方拠点強化税制の拡充
      2. 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
      3. 地方を訪れる外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充
      4. 空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の導入
      5. 通勤手当の非課税限度額の引上げ
    3. 国家戦略特区・国際戦略総合特区
  4. 消費税の軽減税率制度
    1. これまでの議論の経緯と消費税の軽減税率制度の導入の考え方
    2. 安定的な恒久財源の確保
    3. 対象品目及び適用税率
    4. 軽減税率の対象品目は、

      1. 酒類及び外食を除く飲食料品
      2. 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞

      とし、適用税率は8%(国・地方合計)とする。

    5. 税額計算の方法等
    6. 軽減税率制度の円滑な導入・運用のための検証、取組み
  5. 車体課税の見直し
  6. 国境を越えた取引に係る課税の国際的調和に向けた取組み
  7. 森林吸収源対策
  8. 復興支援のための税制上の措置
  9. 円滑・適正な納税のための環境整備

それぞれの立場があると思いますが、やはり一番注目すべきは消費税でしょうか。
これらの詳細は機会があれば、税理士の立場も加えながらご紹介していければと思います。

税制改正大綱

自民・公明両党は10日にそれぞれ税制調査会の総会を開き、消費税の軽減税率の取り扱いを除いて、来年度の税制改正大綱を決定しました。
これに基づいて、その内容がいろいろ報道されています。

税理士にとっては仕事に直接関係することですので、その報道の基となった内容を見ようと思ったところ、私の探し方が悪いのか見つけることができませんでした。

ですので報道されている内容を基に一部ご紹介します。

法人税

法人税実効税率

法人税の実効税率を32.11%から来年度は29.97%に引き下げ。
さらに3年後の2018年度には29.74%まで段階的に引き下げ。

外形標準課税

資本金が1億円を超える企業を対象に、赤字でも事業規模などに応じて課税する外形標準課税が拡大。ただし、中小企業は対象外。

中小企業の設備投資促進

中小企業などが生産性を高めるため160万円以上の生産機械を新たに購入した場合、3年間、固定資産税を半減。

企業版ふるさと納税

寄付した額の最大30%を法人住民税などから差し引き税を軽減。

所得税

市販薬

特定の市販薬の購入額が1世帯当たり年間10万円までは、12,000円を超える部分について、課税所得から差し引き。

通勤手当

通勤手当の非課税限度額が、今の月10万円から15万円に引き上げ。

3世代同居へ住宅改修費控除

3世代の同居に向け住宅の改修を行った場合、税負担を軽減。

消費税

免税対象拡大

外国人旅行者が日本で土産物などを買う場合に消費税が免除される1回の買い物の限度額が、「1万円超」から「5,000円以上」に引き下げ。

贈与税

結婚・出産一括贈与

不妊治療のため薬局で処方された医薬品代や出産前後の医療費、産後の健診費用なども対象とすることを明確化。

自動車関連

2019年4月の消費税率の10%への引き上げに合わせて「自動車取得税」を廃止する代わりに、自動車の購入時に燃費に応じて課税する新たな制度の導入。
具体的には、電気自動車など最も燃費性能の高い車は非課税とし、燃費性能が低くなるにつれて税率が1%ずつ上がり、最も高い税率を3%へ。

先送り・見送り

所得税の配偶者控除

配偶者の年間所得が38万円以下の場合に受けられる「配偶者控除」の廃止が先送り。
配偶者の収入が給与収入のみの場合は、年間で103万円以下であればこの制度を受けることができます。

ベビーシッター税制

ベビーシッター費用を所得から差し引いて税負担を軽減する制度は創設は見送り。

今回の報道は、与党の税制調査会による決定によるものです。法律として決定されたものではありません。
しかしながら、税制改正すべての人に関わることですので、大綱についてもまたご紹介したいと思います。

        

耕作放棄地課税強化

農林水産省と総務省の両省で耕作放棄地の固定資産税を1.8倍にすることが検討されています。

耕作放棄地は税金の安さからそのまま所有する持ち主が多く、やる気のある農家に農地が渡らない現状があり、税負担を重くすることで、改善を図ろうというものです。
同時に農地バンクに貸した農地の固定資産税の軽減も検討しているようです。
TPPの発行をにらんで農地を集約し、農業の国際競争力を高める狙いもあるようです。

平成28年度税制改正の要望にも「農地中間管理機構への貸付けなど農地の利用の効率化及び高度化の促進を図るための農地の保有に係る課税の強化・軽減等の措置(固定資産税等)」と挙げられています。

土地の固定資産税は原則として、評価額の1.4%が毎年かかりますが、農地の評価額は宅地の評価額と比べると、かなり低くなります。また、一般農地では評価額が売買価格の55%となる特例などもあり、こうした特例が評価額を低くする一因となっています。

さいたま市には「見沼たんぼ」の名があるように市内には田園風景がみられるところがあります。
一目見て耕作放棄地かどうかの判断はできませんが、こうした風景の中に埋もれたものもあるのかもしれません。

今回のこの検討案が実現したとすれば、耕作放棄地のまま所有し続ければ増税、農地バンクへ貸与すれば減税という税制面では「アメとムチ」政策となりますが、実際に耕作放棄地を所有されている方の実情も踏まえた対応も必要になってくるのではないかと思います。

上場株式の相続税評価

平成28年度の税制改正の内容について、取り上げられるようになってきました。

税制改正の検討は、夏頃に各省庁から提出される要望から始まります。
これらの要望を加味したうえで、年末には税制改正の概略案として、大綱が作成されます。

こうした要望の中に、金融庁から「上場株式等の相続税評価の見直し」というものが挙げられています。

現在の相続税の評価では、上場株式は原則として相続開始の日の最終価格で評価されます。平たく言えば、相続開始の日にその上場株式を売った金額です。
相続税の評価の原則は、相続時の時価となりますので、換金性の高い上場株式等はその日の価格で評価されるのです。
これに対して土地の評価は、公示価格の80%程度となっています。

このため、株は土地などの他の価格変動リスクのある資産に比べると相続時に売却による処分が選択されることが多いようです。

今回、上場株式等の相続税評価の見直しが要望として挙げられた背景には、株式市場からの影響もあるという見方があります。
株式市場では個人は過去10年で株を28兆円売り越しているそうです。
この売り越しには相続税に絡んだ売却も少なからず含まれているのではという見解です。
また、NISAなどいわゆる「貯蓄から投資へ」とする政策にも逆行しているという見方もあるようです。

あくまで一省庁の要望として掲げられただけですので、今後の動向は分かりませんが、我々税理士にとってはまずは「大綱待ち」と言ったところでしょうか。

少額減価償却資産

中小企業者等が、30万円未満である減価償却資産を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。

現在、この制度の適用期限は平成28年3月31日までとなっています。

期限の延長が要望として出されていますが、現在は未確定となっています。

法人のみならず個人事業でも適用できる制度ですので、是非、延長が決まってほしいと思います。

ベビーシッター代控除

平成28年度の税制改正の要望の第2弾です。

子育て支援に要する費用にかかる税制措置の創設が要望されています。

ベビーシッター等の子育て支援に要する費用の一部について、税制上の所要の措置を講ずるというものです。

税目として、所得税のほか個人住民税も掲げてありました。

内閣府の要望ですが、少子化対策の推進が第一に挙げられています。

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さいたま市緑区の税理士 渡辺税務会計・KWAT

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関東信越税理士会浦和支部所属

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